戦略拠点32098楽園

戦略拠点32098 楽園 (角川スニーカー文庫)

戦略拠点32098 楽園 (角川スニーカー文庫)


やられた。
200ページに満たないから『打ち切りかな?』とか思ってごめんなさい。


カテゴリーは一応SFになると思うのだけど
宇宙戦艦でドンパチし合う様なSFの要素はあまりないです。
正確には、当事者たちとはあまり関係ないラインに存在しているんだけど。


この作品の一番の肝は風景描写だと思います。
一方で、戦艦の機能を詳細に語りつつ
メインになっているのは青い空、野イチゴ、流星雨の描写で
その相反する二つがさらっと描写されています。
そもそも、タイトル自体、「戦略拠点」「楽園」という相反した言葉が並んでますし(笑


また、その二つの要素は登場人物の出自を明確にしています。
外で起こっていることを知っている者と知らない者
それらが敢然一体になって表現される
中盤の流星雨のシーンは一つのピークかと。


メインの登場人物は3人で少ないように思うかもしれませんが
190ページ程度しかないので、逆に丁度いいのかも。
そして、この短さは完全に成功してますね。
少なくとも、これ以上長くしても全部蛇足にしかならないと思いますし
話自体、穏やかで緩やかな時間の流れを感じさせるので
少ないぐらいのページ数だったのは
上手く話をダレずに引き締まらせていたんじゃないかな、と。


ただ、この作品は単体としても楽しめますが
本当に真価を発揮するのは
それこそ最初に書いた『宇宙戦艦が出てきてドンパチやる』ような作品と
併用してこそなんじゃないでしょうか?
もっと簡単に言うなら、ある事象を実際に体験する立場の話ではなく
あくまで傍観者として見ている話なので。


この作品は2001年の作品なので書店にあまり置いてない可能性もありますが
少なくとも値段とページ数以上のものはあると思います。


評価:★★★★ (8)